バイロイトの「オランダ人」(2021年7月25日上演)を見て

2年ぶりのバイロイト音楽祭、日本在住の私は、現場に駆けつけることはできなかったので、例年通り、NHKBSのプレミアムシアターで見ました。 昨年は、コロナの影響で中止。今年の準備も大変だったでしょうし、またプレミア(初日の初演)の「さまよえるオランダ人」は、数あるワグナーのオペラの中でも、比較的初期の短めの作品で、それほどメジャーでもないので、あまり多くを期待していなかったのですが、そんな期待を大きく裏切る? 素晴らしい出来でした。

こんなに力強くて美しい音楽があるとは!

新鮮な驚きでした。

実質的な主役であるゼンダを演じたアスミク・グリコリアンと、私が知る限りバイロイトで女性で初めて指揮をとったオクサーナ・リーエフの二人のパフォーマンスは、これまで見てきたバイロイトの中でも、特筆すべきものだったのではないかと思います。

それにしても、あの力強さと美しさはどこから来たのだろう? ドイツの最新の感染状況はよくわかりませんが、7月時点でかなり状況は良くなっており、やはり2年ぶりに劇場で上演できるという大きな喜びが、歌手とオーケストラに大きな力を与えたのだろうと思います。

劇場は満席。舞台では、合唱の先生以外は、一人もマスクをしていない! そんなニューノーマルの中で、多く人が求めていたトンネルの先の光が、惜しみなく降り注いでいたような時間でした。これまで欧州のロックダウンなどによって1年以上にわたって溜め込まれてきたエネルギーが、解き放たれた喜び、のようなものが伝わってきました。(ちなみに後で専門家に聞きましたが、合唱は流石に感染リスクが高く、昨年は教会などの合唱隊がたびたびクラスターを引き起こしていたようで、慎重になるのも肯けます。)

ところでバイロイトはオーストリアのザルツブルクほど有名ではありませんが、ドイツの南部、ミュンヘンから車で3時間くらいのところにあるとても美しい街で、バイロイト祝祭劇場はワグナー自身が自分のオペラを上演するためだけの目的で建てられました。歴史的には、ナチスに利用されたり色々ありましたが、今でもワグナーファン(ワグネリアンというそうです)の聖地として君臨しています。

目次
閉じる